働きながらこれを読むのは大変苦労した。まず夜読むと確実に眠れないし次の日仕事のやる気を失うので、お日様が出てる時間しか読まないことに決めていた。そのため、読み切るのに3週間くらいかかったけど、その間冷血のことを思い出しては心にずっしりと鉛にようなものがあった。
ただ、ペリーとディックがどうなっていくのかを追わずにはいられず、いちど本を手にすると時間が許す限りページを次つぎめくってしまうのだ。
事件の夜の描写と、逮捕されて二人が追い詰められていくところの二箇所でふつうに気持ち悪くなったり、頭イカれたりした。
こう思うと、ただ人が辛い思いをするのが辛いという、なんというか主義もへったくれもないなと思うんだけど、そういうレベルでしか考えられなくなった。引きずり込まれる。近くの人に感じる。
「ノンフィクション・ノベル」だから、全部が全部とおもっちゃいけないんだけど、事実を語り直すことがもうそのときフィクションだとしたら、こういう形式にしてもらえると、入りやすくはある。それゆえの大反響と危険さを思う。
ペリーが捕まってから夢に見てた「大きな鳥」がやってくる描写がなんだか忘れられない。