◆「少年は荒野を目指す」吉野朔実
安易に既存の関係性に当てはめない、強靭なふたりのワールドに対して、子どものころから夢を見ているところがある、のですが。
他人からもそっくりとされる狩野と陸にまつわる、鮮やかすぎるストーリーテリング、むしろ綺麗すぎるくらい。
物語前半、狩野は自身の内なる不在の少年を辿りながら、ひた隠しにしてきた少女を発見するも、小説がかけなくなる(現実に身体を置けなくなる)。
物語後半、陸は自身のうちで不在へおしやっていた父の存在を認識しながら、自身の母(無償の愛を与えてくれる人)である鳥子が消えることで、他社への無関心の態度を壊される。
パズルのピースはそろい、お互いにとって完全な2人は、この世から逃亡を試みる。。。
描き方もこんな感じでかなりシンメトリーなんだけど、それぞれにとっての拠り所となる「楽園」の描き方もおもしろい。
たぶん、狩野にとっては日夏、陸とっては鳥子。
狩野は「楽園」を自ら否定して自発的に遠ざけようとするけど、陸は「楽園」が去るまで現実を直視できないのだ。
(母親から離れてくれる、都合のよい「親離れ」なんて現実ないと思うなーw)
また、この日夏さんがすごいおいしいキャラ。自分の私利私欲のために動くようにみせながら(実際そうなんだろうけど)、
狩野と陸が、自分と向き合うきっかけを盛大に与えている。。この人がいないと物語が動かないよ、という。
狩野と陸が、自身のうちに押しやって、気づかないように、感じないようにしてきたものを乗り越えて
次の場所へとむかえるようになったとき、2人が交わす言葉は、どこか演劇的で、精神世界にいるみたいに見える。
いわゆる恋愛関係だったら、別れをこんな風に描けないだろう。
出会って自分が足から爪先まで入れ替わるような、人との別れ。
その他「カリフォルニア物語」でかわいいやんちゃな男の子にいやされ
「バルパライソの長い坂を下る話」の戯曲で 南米と日本の島々、生きた骨と死んだ骨、海上で寝ることを想像し
「禁じられた遊び」で「ミシェールミシェール」をやきつけられる。